解決事例
2026/09/28

遺言書の作成【自筆証書遺言+保管制度】

遺言は、自分の財産を誰にどのように承継させるかを決められる手段です。中でも「自筆証書遺言」は、費用をかけずに自分一人で作成できるところがメリットです。
その反面、民法に定められた方式にしたがっていないと、遺言自体が「無効」になるおそれがあります。

自筆証書遺言の民法上の要件

自筆証書遺言は、次の要件を満たさなければ効力を生じません(民法968条)。

(1)全文の自書+財産目録の特例
遺言者が本文全部を手書きする必要があります。パソコンでの作成や代筆は認められません。
ただし、「財産目録」は手書きである必要はありませんが、パソコンなどで作成した場合は財産目録の毎葉(各ページ)に署名押印をしなければなりません。

※令和8年6月に成立した民法改正(令和8年法律第45号)により、押印要件は廃止されることになりました。もっとも、法の施行はまだです(2026年9月現在)。遅くとも2027年6月24日までには法が施行されますので、施行以降は押印が不要となります。

(2)日付の自書
作成年月日の記載が必要です。「令和8年9月吉日」のような記載は、日付を欠くものとして無効とされています(最判昭和54年5月31日参照)。
作成日が一義的に特定できるよう日付を記載しなければならないということです。

(3)氏名の自書
遺言者が誰であるかを明確にするため、氏名を手書きします。

(4)押印
実印である必要はなく、認印や指印でも足りるとされています。

※令和8年6月に成立した民法改正(令和8年法律第45号)により、押印要件は廃止されることになりました。もっとも、法の施行はまだです(2026年9月現在)。遅くとも2027年6月24日までには法が施行されますので、施行以降は押印が不要となります。

(5)加除訂正の方式
内容を変更するには、次の方式によらなければなりません。
・変更の場所を指示する
・変更した旨を付記して、特に署名する
・変更の場所に押印する
方式が厳格なため、誤記があれば全文を書き直す方が安全といえるでしょう。

(6)その他の注意事項
遺言は15歳以上で遺言能力がある者が単独で作成する必要があります(同法961条・963条)。
夫婦連名など、2人以上が同一の証書でする遺言はできません(共同遺言の禁止。同法975条)。

 

自筆証書遺言書保管制度とは

自筆証書遺言は簡単に作成が可能ですが、その反面、方式不備、紛失や改ざん、死後も相続人に発見されないといったリスクがあります。また、家庭裁判所における「検認」手続が必要となります。

このようなリスク・手間を回避するものとして、令和2年7月から法務局が遺言書の原本と画像データを保管する制度(自筆証書遺言保管制度)が始まりました。
主なメリットは次のとおりです。

  • 遺言書原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間保管される。
  • 家庭裁判所の検認が不要。
  • 希望すれば、遺言者死亡時に指定した者へ遺言書が保管されている旨が通知される。
  • 保管申請の手数料は1通3,900円と安いこと。

予約から保管までの手続の流れ

【手順1】遺言書を作成する
民法の要件に加え、保管制度の様式に従う必要があります。
・A4用紙の片面のみを使用する
・余白(上5mm、下10mm、左20mm、右5mm以上)を確保する
・各頁にページ番号を記載する
・封筒には入れず、ホチキス止めもしない

【手順2】保管を申請する法務局を決める
次のいずれかを管轄する遺言書保管所を選びます。
・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地

【手順3】申請書を作成する
法務省ホームページから様式を入手し、事前に記入します。死亡時の通知を希望する場合は、通知先もここで指定します。

【手順4】予約をする
手続には予約が必須です。「法務局手続案内予約サービス」から24時間申し込めるほか、平日8時30分から17時15分までは電話・窓口でも予約できます。

【手順5】遺言者本人が法務局へ出向き申請する
代理人による申請はできません。当日は次のものを持参します。
・遺言書(封をしないもの)
・申請書
・本籍と筆頭者の記載のある住民票の写し等(作成後3か月以内)
・顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等)
・手数料3,900円分の収入印紙
遺言書保管官が本人確認と様式の確認を行います。

【手順6】保管証を受け取る
手続が完了すると、遺言者の氏名や保管番号が記載された保管証が交付されます。遺言書の存在をご家族に伝える際に役立つので、大切に保管してください。

※詳細は法務省のWEBページを参照してください(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html)。

利用上の注意点

保管制度で法務局が確認するのは、遺言の外形的な要式のみです。
遺言の内容や有効性を審査・保証するものではありませんので、記載内容が不明確などの理由で遺言が実現されないといったリスクまで解消できるものではありません。記載内容については専門家への事前相談をおすすめします。

 

(遺言の方式)
第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

(遺言能力)
第九百六十一条 十五歳に達した者は、遺言をすることができる。
第九百六十二条 第五条、第九条、第十三条及び第十七条の規定は、遺言については、適用しない。
第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

(共同遺言の禁止)
第九百七十五条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

 


【執筆者プロフィール】
弁護士・税理士 真鍋亮平
(福岡県弁護士会・九州北部税理士会所属)

「相続」を専門分野として、紛争化した案件(遺産分割協議・調停・審判)だけでなく、遺言書作成・遺言執行、生前対策、税理士のご紹介、税務調査への対応まで一貫してサポートしています。お気軽にご相談ください。

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